ある大学生による鳥まとめ

写真整理のついでに過去に撮った野鳥の写真を種類ごとに公開します

ムネアカタヒバリ / Red-throated pipit

先日北海道にて、ムネアカタヒバリ15羽ほどの群れを観察する機会を得、その羽衣に個体差があっておもしろかったのでまとめてみます。

 

成鳥 2024年9月 北海道道

顔にピンクを多く残す個体。背中に明瞭な縦斑があり、嘴基部は黄色、三列風切が初列を覆うのが本種の特徴。地鳴きもチーといったか細い声で他種とは異なる。

 

成鳥 2024年9月 北海道道

こちらは頬に冬羽的な茶色味が出ている成鳥。観察時も頭の茶色が目立ち、後述する第一回冬羽とは色味の点で異なる印象を受けた。

 

成鳥 2024年9月 北海道道

こちらもピンク味を残すが、より薄くなっているため雌の可能性がある。

 

幼鳥 2024年9月 北海道道

群れの体感7割ほどはこのタイプだった。顔にピンク味は全くなく、眉斑、頬、頸部、腹部にかけて黄色味が強い。日の光を受けて金色に見える個体もいた。第一回冬羽と考えている。

 

幼鳥 2024年9月 北海道道

こちらもピンク味は全くないが、一つ上の個体と比較して黄色味は薄く、眉斑や喉にかけての白味が強い。群れの中で目立ち遠目ではセジロタヒバリも疑った個体。

 

【類似種との識別】

以下ではムネアカ第一回冬羽との識別について記します。

タヒバリビンズイとの識別...(両種は)背中の縦斑が濃くない。ムネアカ以外にも、セジロ、マキバ、ウスベニ、ヨロビンなど珍鳥と呼ばれるタヒバリ類は総じて背中が濃いので、背の縦斑が濃ければとりあえずちゃんと見ようということになります。

セジロタヒバリ冬羽との識別...(セジロは)背中の縦斑に白っぽい4本があり目立つが、ムネアカでもそのような個体はいる。全長は一回り小さく、嘴も若干短い。嘴基部はピンク色。初列は突出。大雨覆羽縁のバフ味は薄い傾向があるようだが、個体差もありそう。地鳴きはハクセキレイ的らしい。

マキバタヒバリ冬羽との識別...(マキバは)背中の縦斑に白味がない。眉斑は目立たない。爪が黒く、後趾の爪は直線的で長い。初列は突出。上面の緑褐色が強い。日本で聞かれた地鳴きはピピッという感じらしい。

ウスベニタヒバリ冬羽との識別...(ウスベニは)背中の縦斑に白味がない。体下面は薄紅色が差す。嘴基部は肉食?少なくとも黄色ではない。小雨覆や腋羽はレモン色であるらしい。初列はやや突出。地鳴きはタヒバリ的。

ヨーロッパビンズイとの識別...(ヨロビンは)初列が突出しない点でムネアカと同じだが、眉斑は目立たない。嘴基部はピンク色。頬に不明瞭な斑がある。腹部の縦斑は脇で針状に細まる。地鳴きはビンズイ的。

アシナガウミツバメ / Wilson's Storm Petrel

幼鳥 2024年8月 八戸-苫小牧航路(苫小牧沖)

みずかきの黄色がギリギリ見える。水面に足をつけてひらひら飛ぶ特徴的な飛び方。初列が換羽しておらず羽衣もフレッシュなため幼鳥とした。

幼鳥 2024年8月 八戸-苫小牧航路(苫小牧沖)

この個体は衰弱していたのか、苫小牧港入港直前で船から必死に逃げるように飛び去っていき、その後ウミネコ幼鳥から襲撃をうけていた。ウミネコとのサイズ差にも注目。

幼鳥 2024年8月 八戸-苫小牧航路(苫小牧沖)

【類似種との識別】

第一に、ウミツバメ類は写真を撮って識別するべきだと思った。自分はこの航路でハグロシロハラミズナギドリやクビワオオシロハラミズナギドリを本気で狙っていたため、双眼鏡での探索に集中した。そこで感じたのは、ウミツバメ類は双眼鏡で識別するには小さすぎるということで、条件次第でコシジロウミツバメの腰の白すら見えないこともしばしばあった。まして遠くのオーストンウミツバメのサイズ感やクロコシジロウミツバメの腰の白の食い込みなど見えるはずもない。ウミツバメの出がいい日は波も高いため、波の陰に隠れてしまうこともよくあった。実際に今回の航路ではオーストン2個体、アシナガ1個体を見落としていることが、同乗者撮影の写真から発覚してしまった。なお本個体は比較的近くを飛んだため双眼鏡でも識別できた。

他のウミツバメ類との識別...(アシナガは)小さい、近くを飛んだ今回は双眼鏡でもわかった違和感。尾羽から足が突出するが、隠れて見えないこともある。足を垂らしながら飛翔していたが、他のウミツバメ類でも離着水のときなどに足を垂らしていることがあるので注意。尾羽は短くて角尾。翼は短い。翼角がとがらない、翼付け根から翼角の長さは短く、湾曲が少ないイメージか。雨覆の明色は細短く翼角には達しない。翼後縁は直線的。腰の白は広いとされるが、写真の個体は下腹部に食い込む様子は見えない。

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『新海鳥ハンドブック(2020 文一総合出版)』などを参考

ケアシノスリ / Rough-legged Buzzard

幼鳥 2022年12月 北海道道

幼鳥 2022年12月 北海道道

幼鳥 2022年12月 北海道道

いずれも別個体。

ケアシノスリ成鳥になると、尾羽のバンドが増える、翼上面の初列の白色が見えなくなる、翼下面後縁の黒色が濃くなる、虹彩の色が暗色になるなどの特徴を持つようになる。この日見たケアシノスリ10個体は全て幼鳥だった。

ハジロコチドリ / Ringed Plover

幼鳥 2022年10月 北海道道

幼鳥 2022年10月 北海道道

みずかきはないですが、そんなに簡単にあったら困ります。

冬羽 2024年1月 北海道道

冬羽 2021年1月 愛知県

【類似種との識別】

ミズカキチドリとの識別...(ミズカキは)嘴が短い傾向がある。成鳥の眉斑は短く、幼鳥でもより細い傾向がある。成鳥では夏羽冬羽問わずアイリングが見える。幼鳥の上面のサブターミナルバンドは目立たない。初列風切の羽軸の白色は4-5枚(ハジコチでは3-4枚)。過眼線は口角につかない。地鳴きも異なる。このあたりを踏まえて足をねばると、内趾と中趾の間にもみずかきがある(非常に小さく条件によっては見えないことも多い)。胸の黒帯はミズカキの方が細いようですが、写真を比較しても分かりにくいように私には思えました。

オオメダイチドリ / Greater Sand Plover

幼鳥 2022年8月 愛知県

幼鳥 2022年8月 愛知県

幼鳥 2024年8月 北海道道

この個体は下面の白味が強く、メダイチドリの中にいてもよく目立った。

 

【類似種との識別】

メダイチドリとの識別...微妙な個体がいて結構紛らわしいが、嘴がオオメダイでは太長い。また、腹部のバフ味が少なく、頭の色など含めて全体的にオオメダイの方が白っぽい印象。

ヒバリシギ / Long-toed Stint

幼鳥 2023年9月 北海道道

成鳥 2023年9月 北海道道

成鳥 2024年7月 北海道道

【類似種との識別】

ウズラシギとの識別...図鑑や写真でみると一見難しいが、大きさが全然違う。

アメリヒバリシギとの識別...(アメリカは)嘴が長く下側に湾曲する傾向がある。頭頂の黒褐色縦斑は嘴基部につながらない。また夏羽と幼羽は褐色味が弱いと『シギ・チドリ類ハンドブック(2014 文一総合出版)』にあるが、これに関して「北海道小清水町におけるアメリヒバリシギ calidris minutillla の日本初記録」(石橋・城石 2024)をみると、シギチハンドにあるようなヒバリ的配色ではないことに気づかされる。全身灰色っぽく、ヒメウズ幼鳥かコシジロウズラ幼鳥的な印象を受けた(まあ両種は初列の突出が目立つ上に足の色が違うので見間違うことはないだろう)。

 

オオジシギ / Latham's Snipe

推定オオジシギ幼鳥 2020年9月 愛知県

推定オオジシギ幼鳥 2020年9月 愛知県

オオジシギ幼鳥 2022年8月 愛知県

成鳥 2023年5月 北海道道

成鳥 2023年5月 北海道道

成鳥 2023年5月 北海道道

成鳥 2023年7月 北海道道

【類似種との識別】

タシギ属は『フィールド図鑑日本の野鳥(2017 文一総合出版)』でその識別が放棄されているように難易度が高いとされる。

タシギとの識別...(タシギは)肩羽の外側羽縁が太く、線状に連なって見える。嘴が細長く、顔が小さく見え、尾が長く見える独特の体型。顔の形は楕円形。このあたりで98%くらいは絞れるかなと思います。次列後縁の白色は飛翔時目立つ。尾羽はふつう14枚でより外側までオレンジ色(オオジは18枚で外側尾羽は白色部が多い)。秋タシギ成鳥の初列は粘ったことないですが、オオジは未換羽なのに対しタシギは換羽中or換羽済み(『BIRDER2016年10月(文一総合出版)』より)。また、オオジシギ成鳥は本州だと7月下旬から見られるが、タシギはこの時期にはみたことはない(詳しくはないが本州中部では8月入ってから?)。

チュウジシギとの識別...(チュウジは)頭部や首など暗色が多い傾向で、典型的な個体は断定したくなるくらい。三列の黒斑が太く見える、頭側線がべったり暗色に見えるなどあるが、個体差激しく結局は尾羽を見ない限り断定はできない。尾羽はふつう20枚で外側尾羽は暗色。初列はタシギ成鳥と同様、換羽中or換羽済み。またタシギ同様、7月で見られることは少ないと思われる。あとこれは感覚ですが、チュウジ成鳥の方がオオジ成鳥よりも警戒心は低い気がする。

ハリオシギは未見なのでここでは割愛します。

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他に『シギ・チドリ類ハンドブック(2014 文一総合出版)』などを参考